豪華列車の旅で一番の楽しみといえば、なんといってもダイニングカーでいただくお食事ですね。瑞風の食堂車「ダイナープレヤデス」では鍋料理を味わえるのが他のクルーズトレインにはない大きな特徴です。走行中の揺れる列車内でもこぼれないようにと、瑞風のために開発された特製の鍋を使います。その真価を「実食」してきました。
豪華列車で鍋料理を出す理由とは
瑞風の運行開始の1年以上前に、料理監修者を紹介する記者発表会が開かれました。その席で、京都の老舗料亭「菊乃井」3代目主人の村田吉弘氏は次のようなコメントをしました。
TWILIGHT EXPRESS 瑞風が走る地域の美味しい食材を少しずつ提供していきたい。揺れる列車の中で苦労しますが、鍋を提供していきたい。てっさ、てっちり、蟹、のどぐろ、ここでしか食べられないような地産地消の料理を考えています
揺れる列車内で鍋をするのは難しいとわかっているけれども、あえてチャレンジしたいという意気込みが感じられます。
しかし、その実現のためには「揺れてもこぼれない鍋」が必要です。
この難問に取り組んだのは大阪府八尾の鍋工房「姫野工作所」。2年もの開発期間をかけて列車内で使える鍋を完成させました。
鍋料理を食べられるのはこのツアーコース
「菊乃井」村田吉弘氏監修の日本料理(鍋料理を含む)をいただくことができるのは
- 山陽上りコースの1日目夕食
- 山陰上りコースの1日目夕食
- 山陽山陰周遊コースの2日目夕食
これら3つのコースだけです。
なぜこのコースだけかというと、下関で水揚げされた新鮮な魚介を仕入れているため。
山陽上りコースと山陰下りコースは下関駅発。山陽山陰周遊コースは1日目の夜間に下関駅を通ります。
産地を移動する列車ならではの献立といえそうです。
ちなみに、山陽下りコースと山陰下りコースの1日目夕食は、レストラン「HAJIME(ハジメ)」オーナーシェフの米田肇氏が監修するフランス料理です。
鍋のセッティング
私がいただいたのは山陽山陰周遊コースの2日目の夕食です。
鍋料理の前には、八寸(前菜)、向付(刺身)、焼物(肉料理)をいただきました。美味であることはもちろん、目にも美しいお料理を堪能しました。
それではいよいよ鍋をはじめることにしましょう!
テーブルの中央部にあるフタを取り外すと…
IH調理器が顔を出しました。
その上に鍋が置かれます。鍋は、底から口のほうにすぼんだ形をしています。
このままだと安定しないので…
木製のフタをかぶせて横方向に動かないように固定します。
これで鍋の設置は完了です。
だしを注いであたためます。
ぐつぐつと煮立って湯気が立ちのぼってきました。ここまで来たら、あとは具材を入れていただくだけです♪
揺れる車内で本当にこぼれなかったのか
出雲市から松江に向けて走行中に鍋料理をいただきました。
沸騰するだしが飛び散ったりすればヤケドを負いかねませんが、もちろんそんな心配はまったく無用でした。
この区間は線路の状態が比較的良いことと、速度を落として走行していたので、そもそも大きく揺れないように配慮されていたのだと思います。
事故防止のため、食事のあいだは駅に停車しておくという考え方もありますが、それでは列車の旅の魅力が損なわれます。
トワイライトエクスプレスの名にふさわしく、夕景を眺めながら、走る車内で食事をとるのがクルーズトレインの醍醐味ですよね。
「たかが鍋」かもしれませんが、現代の匠が列車用の鍋を真剣に開発されたことに敬意を表します。
鍋のお味はどうだった?
鍋のメインの具材は鮑(あわび)とクエ。これを肝ぽん酢または梅ぽん酢でいただくのですから、おいしいに決まってます!(笑)
おそらく季節によってメインの具材は変わっていくのでしょう。
ネタバレになるので料理の紹介はここまでにしますが、これだけだとちょっと寂しいので、デザートの写真で最後を締めたいと思います。