皆さんは「JR大回り乗車」をご存じですか? 最安だと130円のきっぷで一日中列車の旅を楽しめるという裏ワザ的な乗り方です。すでにやっているという方にはなんら難しいことではありませんが、まだやったことがない方だと「本当にそんなことできるの?」とか、「それって不正乗車じゃないの?」という疑問もあるかと思います。
そこで、大回り乗車の概要と基本的なルールをまとめましたので、どうぞご活用ください。
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大回り乗車とは
「大回り乗車」とはいったい何でしょう?
首都圏や大阪圏のように路線網が入り組んだエリアでは、A駅からB駅へ行くのに複数の経路を選べる場合があります。
事例・大阪駅から天満駅へ行く場合
極端な例ですが、大阪環状線で大阪駅から1駅となりの天満駅まで行く場合、あえて遠回りして西九条・天王寺経由で行ったとしても、運賃は最短ルートの130円でOKです。
山手線を例にすれば、東京から有楽町までどちら回りでも140円(IC運賃なら136円)となります。
出札の際に「どの経路を使ったか」を駅係員に問われることはありませんよね。このような乗り方ができる根拠となっているのが、「大都市近郊区間内のみを利用する場合の特例」と呼ばれているものです。
大都市近郊区間内のみを利用する場合の特例とは
- 大都市近郊区間内のみを普通乗車券または回数乗車券でご利用になる場合は、実際にご乗車になる経路にかかわらず、最も安くなる経路で計算した運賃で乗車することができます。 重複しない限り乗車経路は自由に選べますが、途中下車はできません。
- 途中で下車される場合は、実際に乗車された区間の運賃と比較して不足している場合はその差額をいただきます。
簡単に言うと、「決められたエリア内を、交差しない一筆書きの経路で乗車すれば、最短経路の運賃で計算します」ということです。
このルールに則ってさえいれば、大都市近郊区間内の路線を一日中、めいっぱい乗っても最安となる運賃を支払えばいいわけです。
大回り乗車が可能な大都市近郊区間
大都市近郊区間は、東京・新潟・仙台・大阪・福岡の5つのエリアが設定されています。
東京近郊区間
新潟近郊区間
仙台近郊区間
福岡近郊区間
大阪近郊区間
例えば上図の「大阪近郊区間」を見ていただくと、大阪府下のみならず、京都、兵庫、和歌山、奈良、滋賀、三重にわたる広範囲をカバーしていることがおわかりいただけると思います。工夫次第では、1日120円で2府5県を巡ることも可能なのです。
「大回り乗車」という呼び方の由来は?
「大回り乗車」という名称は、もともとは一部の鉄道ファンがそう呼んでいたのが通称化したもので、旧国鉄やJRが命名したものではありません。
ですので、JRの職員に「大回り乗車」と言っても通じない可能性はあります。ただし、私の経験ではこれまでのところ、検札の際や有人改札で係員に「大回り乗車」と言って通じなかったことはありません。
大回り乗車は不正乗車ではないか?
ここまで述べた通り、大回り乗車は不正乗車ではありません。大都市近郊区間内のみ乗車する場合の特例を拡大解釈して、あえて遠回りの経路を乗車して鉄道の旅を楽しもうというのが、この「大回り乗車」なのです。
もっとも、そのような「わざわざ遠回りする乗り方」は本来想定されていなかったことであり、「大回り乗車」は規則の盲点を突いた乗り方と言えると思います。「ルール違反ではないけれど、推奨されるものでもない」といったところです。
問題になるとすれば、大回り乗車の適用範囲をうっかり逸脱した場合でしょう。次ページの「大回り乗車の基本ルールを理解しよう」をしっかり頭に入れてから実行してくださいね。
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