今回のテーマは「紀勢本線乗りつぶし」です。
紀勢本線といえば海沿いの区間が長くて、車窓から太平洋の眺めが素晴らしい絶景路線です。
鉄道ファンのみならず、どなたにもおすすめしたい紀勢本線の列車旅ですが、全線を乗り通そうとすると予想以上に骨が折れる路線でもあります。
この記事では、大阪発着で紀勢本線を一周するプランを、特急列車利用または青春18きっぷで普通列車のみで行く事例で考えてみました。
ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね!
※この記事の時刻表、きっぷ等の情報は2021年2月時点のものです。
紀勢本線とは 路線の概要を説明します
紀勢本線の距離と駅数
紀勢本線(きせいほんせん)は、三重県の亀山から津、多気、新宮、紀伊田辺を経て和歌山市に至る、全長384.2km、駅数が96にもおよぶ長大な路線です。
96もの駅があるということは、各駅停車ですべての駅に停まっていくと、相当な時間がかかりそうだと容易に想像がつくと思います。
JR西日本とJR東海の境界駅となっている新宮駅
紀勢本線は一本の路線ではありますが、途中の新宮駅がJR西日本とJR東海の境界駅になっています。
なので、JR西日本とJR東海、両方の車両が見られる面白い路線でもあります。
また、新宮駅を境にして、和歌山市方面は電化されていますが、亀山方面は非電化となっています。
ちなみに、JR西日本側の新宮~和歌山間は「きのくに線」という愛称で呼ばれています。
新大阪駅や天王寺駅では、「きのくに線の特急くろしお」と案内されているのを聞くことがあるでしょう。
紀勢本線を走る特急列車「くろしお」と「南紀」
左は特急くろしおとして運行されているJR西日本の283系車両。かつては『オーシャンアロー』の愛称で走っていました。
イルカのような愛らしい顔と、流線形のラインが美しい車両です。
京都・新大阪と白浜・新宮のあいだを結んでいます。
この他、287系、289系車両が特急くろしおとして運用されています。
右は特急南紀として運行されているJR東海のキハ85形車両。非電化区間のためディーゼルカーで、高山本線の特急ひだと同型です。
名古屋と紀伊勝浦のあいだを結んでいます。
新宮と紀伊勝浦のあいだは、特急くろしおと特急南紀の両方が走っているので、撮影にうってつけの線区と言えます。
紀勢本線から完全引退となる105系電車
紀伊田辺駅に停車中の105系車両(2018年4月撮影)▼
2021年3月ダイヤ改正で、紀勢本線を走るライトブルーの105系車両が完全引退となります。
後継として、新型車両の227系1000番台に置き換えられます。
105系の引退は残念ですが、老朽化のため冷房の効きが悪い車両もありました。新車への移行で乗り心地が良くなるのは間違いないでしょう。
紀勢本線の「上り」と「下り」
起点は三重県の亀山駅です。つまり、和歌山市から亀山方面に向かうのが「上り」。亀山から和歌山市方面に向かうのが「下り」となります。
関西人は天王寺に来るほうが「上り」じゃないのか?と誤解してしまいがちですが、実は逆なんですね。
和歌山市駅までが紀勢本線
和歌山駅から紀和駅を経て和歌山市駅に至る区間も、紀勢本線の一部です。
この区間は、2両編成の列車が行ったり来たりするだけで、およそ本線とは思えない扱いになっています。
しかしながら、かつては難波駅から南海本線を走り、和歌山市駅で紀勢本線に乗り入れる「急行きのくに」のような列車が駆け抜けた時代もありました。
そんな歴史の名残りが感じられる路線です。
亀山駅を通らない短絡ルートの伊勢鉄道
関西本線の河原田駅から紀勢本線の津駅へ、ショートカットするような形で伊勢鉄道という路線がつながっています。
地図を見ると、亀山、河原田、津を頂点とするデルタ線のような形で敷設されているのがよくわかります。
伊勢鉄道は JRの路線ではありませんが、名古屋から鳥羽方面の「快速みえ」や紀伊勝浦方面の「特急南紀」が伊勢鉄道経由で走っていて、亀山駅は紀勢本線の起点であるにも関わらず、まるで支線みたいなローカルな駅になっています。
伊勢鉄道は青春18きっぷで乗れるのか?
JR東海の特急・快速列車が伊勢鉄道を通過するので、こちらを使うほうが明らかに便利なのですが、伊勢鉄道は青春18きっぷで乗ることができません。
JR の路線ではないので当然といえば当然ですが、あいにく青春18きっぷで通過できる特例も設定されていません。
もし伊勢鉄道を通る場合は、運賃を別途ご用意ください。
▼伊勢鉄道
紀勢本線の乗りつぶしで要注意の閑散区間
紀勢本線を全線乗車するプランを考えるときに、一番ネックになる運転本数が少ない区間は周参見から串本の間です。
普通列車が一日8往復、特急列車が一日6往復。両方合わせても一日14往復しかありません。
これは新型コロナウイルス感染拡大防止のための減便をする前のダイヤですので、今はもっと少ない本数になっているはずです。
乗車プランを立てるときは、この周参見~串本をいかに時間のロスなく乗り継いで行けるかが重要になります。
紀勢本線乗りつぶしにおすすめの切符
紀勢本線をお得に乗車できるきっぷを紹介したかったのですが、実は「紀勢本線全線乗り放題きっぷ」なるものは存在しません。
新宮駅でJR西日本とJR東海に分かれるため、どうしても自社エリアに偏った企画きっぷばかりになってしまうのでしょう。
そんな中でお得に使えるきっぷとしては、国鉄時代から発売されている「青春18きっぷ」か「フルムーン夫婦グリーンパス」が挙げられます。
しかし、「青春18きっぷ」は特急列車の乗車券として使えませんし、「フルムーン夫婦グリーンパス」は一人旅では使えません。
残る手段は、一筆書きの乗車距離が長いコースにして運賃を低減させるくらいです。
正規運賃と自由席特急料金を調べてみました。
紀勢本線・亀山~和歌山市駅の運賃は6,600円です。
特急列車を利用する場合、津~新宮の自由席特急料金は2,200円。新宮~和歌山の自由席特急料金は1,980円です。
合計すると10,780円で、結構なお値段になります。
とはいうものの、乗車券の有効期間が3日間あるので、道中、何度でも途中下車できるメリットがあります。
東海地区から南紀へお得なきっぷ
全線乗り潰しにこだわらなければ、発駅から南紀までお得に往復できるきっぷがあります。
「南紀・熊野古道フリーきっぷ」は東海地区から南紀方面のお出かけにおすすめのトクトクきっぷです。
3日間有効で往復とも特急南紀を利用できます。
名古屋市内発だと大人9,970円。正規運賃・特急料金で紀伊勝浦まで往復すると15,720円かかるので、6,000円近くお安くなります。
▼JR東海|お得なきっぷ
https://railway.jr-central.co.jp/tickets/
関西から南紀へお得なきっぷ
JR西日本で京阪神から南紀方面のお得なきっぷとして「くろしお指定席きっぷ」を紹介します。
大阪市内発で新宮まで片道5,500円で特急くろしお指定席に乗れます。
通常片道7,350円ですから1,850円も節約できます。
往復するとやはり高いお値段になってしまいますが、できるだけ速くラクに南紀へ出かけたいときには役に立ちます。
▼JRおでかけネット|トクトクきっぷ
https://www.jr-odekake.net/railroad/ticket/tokutoku/
紀勢本線全線乗りつぶしモデルプラン
ここからは、大阪発着で紀勢本線を一周するプランを3つご紹介します。
特急利用で日帰りの場合と、青春18きっぷを使って普通列車のみで行く場合(日帰りコース、1泊2日コース)を考えてみました。
【紀勢本線完乗】特急利用で日帰り一日コース
特急列車を使って、サクっと速く、ラクに乗りつぶすプランです。
出発地を難波にしたのは、南海特急サザンで和歌山市駅へ乗り付けたかったからです。
和歌山市駅からいよいよ紀勢本線の旅がはじまります。
特急くろしお1号で紀伊勝浦まで3時間弱。
紀伊勝浦でランチタイムを過ごしたあとは、特急ワイドビュー南紀6号に揺られて三重県の県都、津を目指します。
朝7時に難波を出て、大阪着は午後7時になるころですから、およそ12時間で紀伊半島を一周してくることができます。
お好みで、名古屋経由で新幹線で大阪へ向かうコースや、松阪で近鉄特急に乗り換えて大阪難波へ向かうコースもおすすめです。
【紀勢本線完乗】普通列車だけで日帰り一日コース
青春18きっぷ一回分だけで紀勢本線を一周する、日帰りコースを考えてみました。
天王寺を早朝6時31分に出発。
和歌山市駅まで往復したのち、湯浅、紀伊田辺の順に乗り換えていきます。
新宮に12時50分に到着すると、次の列車まで36分の待ち時間ができます。この時間を利用して昼食をとったり、駅のまわりを散策したりして休憩しましょう。
新宮から先はJR東海のエリアに入ります。太平洋の眺めを満喫したのち、多気に到着するのは17時28分。冬だとあたりはもう暗くなっているかもしれません。
亀山から関西本線、草津線を経由して大阪着が21時17分。
およそ15時間を超える長旅で、コストパフォーマンスは最高ですが、気力と体力がないと挫けてしまいそうです。
実は筆者が20代のころ、このコースで紀勢本線を一周したことがあります。
海の眺めがきれいだったことが印象的でしたが、それよりも、日が暮れてからの時間の長さとお尻が痛かったことの方が、強く思い出に刻まれています。
ですので、誰にもオススメできるコースではないと感じています。
【紀勢本線完乗】普通列車だけで2日間コース(1泊2日)
1日目・大阪→亀山→松阪→尾鷲→新宮
日帰りコースは過酷ですが、1泊2日にすれば旅程にすいぶん余裕ができます。
ひたすら列車に乗り続けるのではなく、途中下車でちょっとした観光も予定に入れてみました。
このコースは、大阪から亀山、松阪、新宮、串本、和歌山の順に、時計回りで紀勢本線を一周するルートにしました。
第一日目は大阪駅を出発して草津線、関西本線を経由し、亀山へ向かいます。
松阪には12時5分着ということで、ここで一旦改札を出て昼食にしましょう。
松坂といえば高級和牛で有名ですが、駅弁にも「牛肉弁当」があります。列車のなかでじっくり噛みしめながら味わいたいですね。
▼駅弁のあら竹
https://www.ekiben-aratake.com/
途中の尾鷲では20分ほどの停車時間があります。気分転換に改札を出てみるのもいいでしょう。
新宮到着は17時4分。まだ夕方ですし、先へ進む列車がありますが、JRの境界となるこの駅で宿を取りたいと思います。
新宮駅周辺には一人客でも泊まりやすいビジネスホテルが多くあります。
食事つきの温泉旅館がご希望なら、紀伊勝浦まで足を延ばすことをおすすめします。
2日目・新宮→串本→紀伊田辺→和歌山市→大阪
新宮発→紀伊田辺行きの始発列車、6時56分発に乗車します。
この列車で一気に紀伊田辺まで行ってもいいですが、せっかく本州最南端まで来たのですから串本駅で途中下車しましょう!
串本駅から潮岬へ行く「串本町コミュニティバス潮岬線」があるので、これを利用します。
20分弱の乗車時間で、運賃は片道200円です。1時間に1本程度の運行があるので、ゆっくりと岬見物ができます。
串本で再び列車に乗り込み(10時25分発)、紀伊田辺にはちょうどお昼どきの12時13分着です。昼食や買い物をして次の列車を待ちましょう。
御坊、和歌山の順に北上し、和歌山で和歌山市行きに乗り換えれば、紀勢本線完乗の最終ランナーとなります。
あとは和歌山駅に戻って紀州路快速に乗れば、大阪には18時ころに余裕をもって到着できます。
特急列車と普通列車を組み合わせて途中下車を楽しもう
紹介したプランは参考になったでしょうか?
紀勢本線は全長384.2kmに96もの駅がありますから、素通りするだけではもったいない、魅力いっぱいの路線です。
普通列車だけで出かけるのは時間が掛かりすぎてしまうので、ところどころ特急列車でワープしながら、効率よく途中下車を楽しんでみてください。
紀勢本線乗りつぶしプラン【解説動画】
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