千葉市を訪れたなら、ぜひ体験してほしいのが、頭上をダイナミックに走り抜ける千葉都市モノレールです。
街の中心部から郊外までを結ぶこのモノレールは、懸垂式としては世界最長の営業距離15.2kmを誇り、2001年にはギネス世界記録にも認定されています。「空を飛んでいるような気分」をたっぷり楽しめるユニークな乗り物です。
今回は、その独特な魅力と、沿線で見逃せないスポットをご紹介します。
まるで空を散歩!懸垂式「SAFEGE」システムとは

千葉都市モノレールの最大の特徴は、車両がレールの上に載るのではなく、ぶら下がって走行する「懸垂式」を採用していること。この方式は、世界的にも珍しく、日本国内では千葉都市モノレールと湘南モノレールの2ヶ所のみで見られます。この懸垂式は、「SAFEGE(サフェージュ)」と呼ばれるシステムで、フランスで開発されました。
線路にまたがる方式(跨座式)のモノレールは「ALWEG(アルウェーグまたはアルヴェーグ)」と呼ばれ、ドイツで発明されたといわれています。日本国内では、改良を加えた「日本跨座式」が普及しています。
SAFEGEシステムは、箱型の軌道桁の中に車輪や台車、走行装置などが組み込まれており、車輪にはゴムタイヤを使用しているため、走行時の騒音や振動が非常に少ないのが特徴です。また、軌道桁が密閉された構造になっているため、雨や雪などの天候に左右されにくいという大きなメリットがあります。
さらに、急なカーブや勾配にも強く、支持柱も細く済むため、道路の幅をあまり必要としないのも都市部での建設に適しています。このシステムは、タイヤメーカーのミシュランや自動車メーカーのルノーを含む25のフランス企業が共同で開発したものであり、その技術力の高さが伺えます。
世界的に見ると懸垂式モノレールは少数派ですが、千葉ではその特性が活かされ、市民の足として重要な役割を果たしています。
特徴 | 懸垂式モノレール | 跨座式モノレール |
軌道タイプ | 密閉型箱桁 | コンクリート製桁 |
車両位置 | 懸垂式(下) | 跨座式(上) |
耐候性 | 高 | 中程度 |
騒音レベル | 低 | 中程度 |
カーブ走行 | 優 | 優 |
日本の営業路線 | 千葉都市モノレール 湘南モノレール | 東京モノレール 多摩都市モノレール 舞浜リゾートライン 大阪モノレール 北九州モノレール ゆいレール(沖縄) |
千葉の街と共に歩んだ歴史

千葉都市モノレールの計画は、1960年代後半から70年代にかけて、千葉都市圏の人口増加と自動車の普及による交通渋滞の深刻化を背景に始まりました。1979年には、千葉県と千葉市が出資する第三セクターとして千葉都市モノレール株式会社が設立され、モノレールの建設が進められました。
当初は地下鉄案も検討されましたが、最終的に道路上の空間を有効活用できる懸垂式モノレールが採用されました。建設にあたっては、軌道桁の軽量化や騒音対策など、様々な技術開発が行われたそうです。
開業は段階的に進められ、1988年にまず2号線のスポーツセンター駅から千城台駅間が開業しました。その後、1991年には千葉駅からスポーツセンター駅間(2号線)、1995年には千葉みなと駅から千葉駅間(1号線)、そして1999年には千葉駅から県庁前駅間(1号線)が開業し、現在の路線網が完成しました。
そして2001年、その総営業距離が懸垂式モノレールとして世界最長となり、ギネス世界記録に登録されたのです。
2012年には、より快適で環境に配慮した新型車両0形「アーバンフライヤー」が登場し、現在も運行されています。
開業当初は8.1kmの営業距離でしたが、延伸を重ねて現在の長さになった背景には、千葉市の都市交通をより良くしようという強い思いがあったことが伺えます。かつては延伸計画もあったようですが、需要などを考慮して中止となっています。
開業以来、5億人以上もの人々が利用しており、千葉市民にとってかけがえのない交通手段となっています。

千葉都市モノレール 公式HPから引用
空の旅を彩る個性的な車両たち
千葉都市モノレールでは、主に2種類の車両が運行しています。開業当初から活躍している1000形と、2012年に導入された0形「アーバンフライヤー」です。
1000形

1000形は、シルバーの車体にコバルトブルーとスカイブルーのラインが特徴で、主に2両編成で運行されています。定員は約79〜84名です。
0形「アーバンフライヤー」

一方、0形「アーバンフライヤー」は、「空」をコンセプトにした流線的なデザインが魅力です。先頭部分が斜めにカットされたウェッジラインと鮮やかなブルーの車体が特徴で、車内は窓が大きく取られており、より開放的な空間で景色を楽しめるようになっています。

さらに、運転席の一部にはガラス床が採用されており、真下の景色を眺めることができるというユニークな仕掛けも。
バリアフリーにも配慮されており、車椅子スペースも完備されています。この斬新なデザインは高く評価され、2012年にはグッドデザイン賞を受賞しています。
沿線には魅力的なスポットが満載

千葉都市モノレールは、2つの路線で千葉市内の様々なエリアを結んでいます。それぞれの沿線には、個性豊かな見どころがたくさんあります。
1号線:海風を感じるベイエリアと都市のにぎわい
千葉みなと駅から県庁前駅を結ぶ1号線は、海沿いの開放的な景色と、都市部の活気を感じられるエリアを通ります。
千葉みなと駅 を降りてすぐの場所には、レストランやショップ、クルージングなどが楽しめる複合施設「ケーズハーバー」があります。徒歩約7〜10分の距離です。また、千葉港のシンボルである「千葉ポートタワー」へも徒歩約12分でアクセスでき、展望室からは東京湾や千葉市街を一望できます。湾岸エリアの観光拠点として最適です。
市役所前駅 周辺は、オフィス街が広がっていますが、少し足を伸ばせば住宅街もあり、落ち着いた雰囲気も感じられます。
千葉駅 は、JR各線との乗り換えも便利なターミナル駅です。駅周辺には、美しい社殿を持つ「千葉神社」が徒歩約10分の場所にあり、参拝に訪れる人も多くいます。また、JR駅直結の「ペリエ千葉」や「C-One」など、ショッピング施設も充実しており、買い物にも便利です。
栄町駅 周辺は商業エリアとなっています。
葭川(よしかわ)公園駅 で降りると、参加体験型の科学館「千葉市科学館(Qiball)」 へは徒歩5分ほど。プラネタリウムも併設されており、大人も子供も楽しめます。また、「千葉市美術館」も徒歩7分ほどの場所にあり、アートに触れることができます。
終点の県庁前駅 の近くには、千葉県庁があります。そして、駅から徒歩約5〜13分 の場所には、千葉氏ゆかりの地である「亥鼻(いのはな)公園(千葉城・千葉市郷土博物館)」があります。再建された天守閣からは市内を一望でき、歴史を学ぶこともできます。
2号線:緑豊かな公園と郊外の魅力
千葉駅から千城台駅を結ぶ2号線は、緑豊かな公園や住宅街が広がる、のどかなエリアを通ります。
千葉公園駅 を降りると、目の前には広大な「千葉公園」が広がります。春は桜、夏は大賀ハス、秋は紅葉と、四季折々の自然を楽しめる市民の憩いの場です。ボートに乗ったり、スポーツ施設を利用したりすることもできます。駅からは徒歩約2分とアクセスも抜群です。
都賀駅 はJR・総武本線との乗換駅で、周辺は住宅街となっています。
桜木駅 からは、日本最大級の縄文時代の貝塚である「加曽利貝塚博物館」へ徒歩約15分で行くことができます。縄文時代の暮らしを垣間見ることができる貴重な場所です。
動物公園駅 のすぐそばには、レッサーパンダの風太くんで一躍有名になった「千葉市動物公園」 があります。駅前なのでアクセス至便。様々な動物たちに出会える人気のスポットです。
千城台駅 には、駅直結のショッピングモール「イコアス千城台」があり、買い物や食事を楽しむことができます。
沿線には他にも、紅嶽弁財天(みつわ台駅)、坂月川ビオトープ(小倉台駅)、千城台野鳥観察園(千城台北駅)など、地域に根ざした魅力的なスポットが点在しています。
路線 | 駅名 | 主なおでかけスポット | 最寄駅からの距離(目安) |
1号線 | 千葉みなと駅 | ケーズハーバー、千葉ポートタワー | 徒歩7〜12分 |
1号線 | 千葉駅 | 千葉神社、ペリエ千葉、C-One | 徒歩約10分 |
1号線 | 葭川公園駅 | 千葉市科学館(Qiball)、千葉市美術館 | 徒歩4〜7分 |
1号線 | 県庁前駅 | 亥鼻公園(千葉城・千葉市郷土博物館) | 徒歩5〜13分 |
2号線 | 千葉公園駅 | 千葉公園 | 徒歩2分 |
2号線 | 桜木駅 | 加曽利貝塚博物館 | 徒歩約15分 |
2号線 | 動物公園駅 | 千葉市動物公園 | 徒歩1分 |
2号線 | 千城台駅 | イコアス千城台 | 直結 |
もっと知りたい!千葉都市モノレールのあれこれ
千葉都市モノレールには、懸垂式ならではのトピックがいろいろあります。
千葉都市モノレールの車体を支えるワイヤーの一部を使った「落ちないお守り」が販売されており、受験や就職活動のお守りとして人気を集めています。
さらに、マスコットキャラクターの「モノちゃん」は、青いサルがモチーフで、様々なオリジナルグッズも販売されています。発車メロディや車内アナウンスなど、7種類の音が楽しめる「オリジナルサウンドトレイン」というおもちゃもあるそうです。
実際に利用した人からは、「まるで空を飛んでいるような感覚で景色を楽しめた」、「街並みや自然の景色がいつもと違って見えて新鮮だった」という声が聞かれます。また、ゴムタイヤで走行するため、「乗り心地がスムーズで静かだった」という意見も。
空の冒険へ出発進行!
千葉都市モノレールは、平日朝のラッシュ時には平均6分40秒間隔、日中は平均12〜15分間隔で運行しています。
お得な「お昼のお出かけフリーきっぷ」や「ホリデーフリーパス」などの割引乗車券も用意されています。また、毎年秋には「ちばモノレール祭り」が開催され、様々なイベントを楽しむことができます。普段は見られない車両基地の見学は特に人気で、かなりの狭き門となっています。
千葉都市モノレールは、単なる移動手段を超えた、空の遊覧体験を提供してくれます。ぜひ一度、このユニークなモノレールに乗って、いつもとは違う視点から千葉の街を探索してみてはいかがでしょうか。