東京、大阪、名古屋の地下鉄で大回り乗車する場合のルールと、地下鉄特有の「改札外乗換」の扱いについて詳しく解説いたします。
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地下鉄で大回り乗車できる?できない?
東京、大阪、名古屋の地下鉄は広大で複雑な路線網を有しており、乗り換えの手間さえ厭わなければ、さまざまな乗車経路を選択することができます。
各社局の旅客営業規則によると、原則としてどの経路を利用しても、運賃は最短経路のキロ程で計算することになっています。
つまり、いわゆる大回り乗車が可能といえます。
大回り乗車のルールは、ごく簡単に説明すると、JRの大回り乗車と同様です。
発駅から着駅まで、同じ駅を2回通らない一筆書きの経路であれば、わざと遠回りしても最短経路の運賃でOKです。
ただし、このルールは同一の社局内のみを利用する場合に適用されます。
他社線と相互乗り入れしている場合、他社線を経由する大回り乗車が許されるかどうかは、個別に確認する必要があります。
東京メトロの大回り乗車 基本ルール
東京メトロにおいて、いわゆる大回り乗車ができます。
東京メトロの旅客営業規則(片道普通旅客運賃計算方の特例)
「・・・最も短い経路のキロ程によって計算する」と明記されています。
東京メトロ大回り乗車の途中で改札外乗換えできるか?
東京メトロの下記の駅では、改札外乗換(一旦改札口を出場して乗り換える)の取り扱いがあります。
- 上野駅(銀座線と日比谷線)
- 三越前駅(銀座線と半蔵門線)
- 上野広小路駅‐仲御徒町駅(銀座線と日比谷線)
- 大手町駅(丸ノ内線と東西線・千代田線・半蔵門線/東西線と丸ノ内線・千代田線・半蔵門線/千代田線と丸ノ内・東西線・半蔵門線/半蔵門線と丸ノ内線・東西線・千代田線)
- 池袋駅(丸ノ内線と副都心線/丸ノ内線・副都心線と有楽町線)
- 飯田橋駅(東西線と有楽町線・南北線)
- 日比谷駅‐有楽町駅(日比谷線・千代田線と有楽町線)
- 淡路町駅‐新御茶ノ水駅(丸ノ内線と千代田線)
- 渋谷駅(銀座線と副都心線)
- 新宿三丁目駅(丸ノ内線と副都心線)
- 人形町駅‐水天宮前駅(日比谷線と半蔵門線)
- 築地駅‐新富町駅(日比谷線と有楽町線)
- 銀座駅‐銀座一丁目駅(銀座線・丸ノ内線・日比谷線と有楽町線)
- 虎ノ門駅‐虎ノ門ヒルズ駅(銀座線と日比谷線)
上記の駅において、紙のきっぷで一旦改札口を出場して乗り換える場合は、オレンジ色の改札機を利用します。
また、乗り換え時間が60分を超えた場合は入場不可となり、新たにきっぷを買いなおす必要があります。
紙のきっぷで改札外乗換をする場合の運賃の扱い
大回り乗車の途中で、改札外乗換をすることはできるのでしょうか?
東京メトロの旅客営業規定には、次のような条文があり、対応が明確に決まっています。
(う回乗車)
第82条 第45条に掲げる区間内各駅間相互発着又は通過となる普通乗車券又は回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においてはその乗車券の運賃計算経路にかかわらず、う回して乗車することができる。2 前項によるう回乗車中の旅客がう回区間の途中駅に下車したときは、乗車変更として取り扱う。
(乗換えの制限)
第83条 前条第1項の規定にかかわらず、次に掲げる乗換駅においては、括弧内の路線相互について乗車する発着駅間の普通旅客運賃と比較して、発駅又は着駅から当該乗換駅までの運賃が高額となる場合は、別表第2号表に掲げる運賃による当該乗換駅での乗換えはできない。
上野(銀座線と日比谷線)、大手町(丸ノ内線と東西線・千代田線・半蔵門線、東西線と丸ノ内線・千代田線・半
蔵門線、千代田線と丸ノ内線・東西線・半蔵門線及び半蔵門線と丸ノ内線・東西線・千代田線)、池袋(丸ノ内線と副都心線、丸ノ内線・副都心線と有楽町線)、飯田橋(東西線と有楽町線・南北線)、日比谷・有楽町(日比谷線・千代田線と有楽町線)、淡路町・新御茶ノ水(丸ノ内線と千代田線)、三越前(銀座線と半蔵門線)、上野広小路・仲御徒町(銀座線と日比谷線)、渋谷(銀座線と副都心線)、新宿三丁目(丸ノ内線と副都心線)、人形町・水天宮前(日比谷線と半蔵門線)、築地・新富町(日比谷線と有楽町線)、銀座・銀座一丁目(銀座線・丸ノ内線・日比谷線と有楽町線)、虎ノ門・虎ノ門ヒルズ(銀座線と日比谷線)2 片道乗車券又は回数乗車券を所持する旅客は、前項に掲げる乗換駅において、乗換時間が60分を超えると、当該乗換駅での乗換えはできない。
3 前2項の規定にかかわらず、大手町、池袋及び新宿三丁目において改札口を通過せずに乗換えを行う場合はこの限りではない。この場合において、当社は改札口を通過せずに行う乗換えを必要に応じて制限することができる。
「東京メトロ 旅客営業規定」より引用
発駅から乗換駅までの運賃が、所持しているきっぷの運賃より高額となる場合、運賃不足となり乗り換えることができません。
この条件に当てはまる場合、大回り乗車で改札外乗換をすることは不可となります。
ICカード乗車券で改札外乗換をする場合の運賃の扱い
PASMOなどのICカード乗車券を利用する場合は、次の規定があります。
(ICSF乗車券における運賃の減額)
第14条 旅客がICSF乗車券を使用して乗車する場合、出場時に当該乗車区間に対する大人片道普通旅客運賃をSF残額から減額する。ただし、小児用PASMOにあっては、小児片道普通旅客運賃を減額する。2 当社の駅発着となる場合で、当該発着区間内に他のIC鉄道事業者を含む場合であっても、特に認めた場合を除き、全線当社線を使用したものとみなして、片道普通旅客運賃を収受する。
3 乗換駅を経由して着駅で出場する場合は、発着区間の片道普通旅客運賃相当額と当該乗換駅における収受額とを比較し、不足額は収受し過剰額は払戻しをしないものとする。
「東京メトロ ICカード乗車券取扱規則」より引用
第14条3項にあるように、乗換駅において、発駅から乗換駅までの運賃が差し引かれます。
着駅において、発駅から着駅までの運賃と、乗換駅で差し引かれた運賃を比較し、不足があれば差額を収受しますが、過剰の場合は払い戻しされません。
わかりにくいので、具体例で説明します。
改札外乗換を経由する運賃計算の例
例えば、ICカード乗車券で、表参道→東銀座の最短経路の運賃は168円です。
これをあえて、上野の改札外乗換を経由して利用すると199円になります。
表参道→上野の運賃が199円であるため、銀座線の上野駅を出るときに199円引かれます。
日比谷線に乗り換えて東銀座で改札を出るとき、表参道→東銀座の運賃168円と上野駅で収受済みの199円を比較し、不足がないためそのまま通過となります。
差額の31円は払い戻しされません。
これは規則通りの運賃計算ですので「差額を返せ!」というのは筋違いです。
以上のことから、紙のきっぷであれ、ICカード乗車券であれ、改札外乗換を経由する大回り乗車はやめておいたほうがいいでしょう。
都営地下鉄の大回り乗車 基本ルール
都営地下鉄において、いわゆる大回り乗車ができます。
都営地下鉄の旅客営業規則(普通旅客運賃計算法の特例)
「・・・最も短い経路のキロ程によって計算する」と明記されています。
都営地下鉄の大回り乗車の途中で改札外乗換えできるか?
都営地下鉄においても、東京メトロと同様に改札外乗換ができる駅があります。
乗り換え時間が60分以内であれば、1枚のきっぷを通しで利用できます。
- 東日本橋駅・馬画像横山駅(浅草線及び新宿線)
- 蔵前駅(浅草線及び大江戸線)
ただし、これも東京メトロの場合と同様に、乗換駅において発駅から乗換駅までの運賃が差し引かれるため、大回り乗車の経路で利用することは実質的に不可能です。
大阪メトロの大回り乗車 基本ルール
大阪メトロにおいて、ニュートラムを含む全路線で大回り乗車できます。
大阪メトロの旅客営業規則(う回乗車の取扱い)
大阪メトロの旅客営業規則(乗継駅での乗継)
大阪メトロにおいて改札外乗換ができるのは、梅田・東梅田・西梅田の3駅のあいだのみです。
乗り継ぎを適用するためには、30分以内の乗り換えが求められています。
東京メトロの場合と同様に、乗換駅において発駅から乗換駅までの運賃が差し引かれるため、大回り乗車の経路で利用することは実質的に不可能です。
名古屋市営地下鉄の大回り乗車 基本ルール
名古屋市営地下鉄において、いわゆる大回り乗車ができます。
名鉄を経由する大回り乗車は可能か?
名古屋市営地下鉄は、鶴舞線および上飯田線で名古屋鉄道と相互乗り入れしています。
つまり、改札を通ることなく名鉄を利用することが可能です。
であるならば、名古屋市営地下鉄から名鉄線を経由して地下鉄の駅に戻る大回り乗車ができそうです。
しかしながら、筆者が調べた限りにおいて、できると言える根拠が今のところ見当たらないため、やらない方が安全だと判断します。
正確な情報を入手できましたら、改めて解説させていただきます。