台風による土砂崩れで長らく不通となっていた大井川鉄道井川線の接阻峡温泉駅~井川駅のあいだが復旧し、2017年3月11日から運行を再開しました。この朗報を聞きつけて、私も3月28日に大井川鉄道を旅してきました。金谷から井川まで列車で往復するだけではつまらないので、閑蔵で路線バスに乗り換えて接阻峡温泉に浸かってきました。ここは「若返りの湯」と呼ばれているだけあって、お肌がツルツルになりました。奥大井の旅におすすめです!
大井川本線・金谷駅から千頭駅へ
大井川本線・金谷駅で大井川周遊きっぷを購入
東京駅八重洲口から夜行高速バスで静岡駅に到着し、静岡鉄道を乗車してから金谷駅にやってきました。といっても時刻はまだ7時半です。
金谷駅で降りる人が多かったので、「え、まさかこの人たち、大井川鉄道に乗り換えるの?」と少し焦りましたが、ほとんどが駅前でバス待ちの列を作っていました。近隣の事業所に通勤する人たちだったようです。
大井川鉄道の窓口で「井川まで往復」と告げると、「周遊きっぷのほうが安いですよ」と教えていただいたので仰せに従います。
通常の乗車券だと往復6,260円かかりますが、大井川周遊きっぷなら4,400円と、1,860円もお安くなるだけでなく、路線バスにも乗れて、全線乗り降り自由、2日間有効になるなど使い勝手のいいきっぷです。
元近鉄の16000系に乗って千頭駅へ
次の千頭行きは7時48分発。金谷駅のホームに停まっていたのは元近鉄の16000系でした。
古さは否めませんが、クロスシートの特急車両を普通列車として使っているのは贅沢ですね。
大きな窓で、大井川の雄大な流れを眺めることができます。
大井川の表情を楽しむ
下流から上流へさかのぼっていくと、川幅はだんだん狭くなり、穏やかに見えた流れも速く感じるようになります。そんな川の表情がわかる写真をピックアップしてみました。
だだっ広い河原。
のどかな山里の風景。水の色が透明感のあるグリーンに。
源流に近づくにつれて峡谷の景観になってきました。これは井川線の車窓。
南アルプスあぷとラインで終点・井川駅へ
千頭駅で井川線に乗り換え
大井川本線の終点・千頭(せんず)駅。この駅で、井川線(南アルプスあぷとライン)の列車に乗り換えます。
スイスの登山列車を思わせる赤い車両。ヘッドマークはなぜかブルートレインの「さくら」。
車体が小さいので車内もコンパクト。座席は2列+1列。
平日の1便目ということで乗客はまばら。1車両に1組しか乗っていないという貸し切り状態でした。
半室オープンデッキの車両もあります。
わずか5分の乗り換え時間で、井川へ向けて発車しました。
アプトいちしろ駅でアプト式機関車を連結
千頭駅を発車した列車は、ガタゴトと列車らしいリズムを刻みながらゆっくり走行していきます。
井川線のメインイベント。アプト式機関車による急勾配区間に入ります。
アプトいちしろ駅で最後尾にアプト式機関車を連結。
いよいよ発車。体でも感じるほど、これまでにはない傾斜をゆっくり登っていきます。
アプト式は、線路の真ん中に敷設されたラックレールに、専用の機関車が歯車を噛み合わせて登っていくわけですが、客車に音や振動が伝わってくることはありません。
車窓には巨大な長島ダムの姿が。放水されている水が白く輝いています。
後ろを振り返ると90パーミルを誇る急勾配が望めます。
井川駅に到着
終点に近づくにつれて山が深くなってきます。あんなに川幅が広かった大井川も、ここでは山峡を縫うようにくねくねと向きを変えながら流れています。
井川駅に到着。
トンネルを出たすぐそばに駅があります。山懐に抱かれたような風情で、秘境に来た感が湧いてきます。
通常期は一日に4本しか列車が来ない過疎地の駅ですが、駅員さんがいてくれるのはなんだかうれしいですね。
乗ってきた列車が折り返し、次の千頭行きとなります。
井川駅周辺を散策
井川の駅前風景。静岡市自主運行バスの井川駅前バス停があります。横沢行きのバスに乗れば、終点でしずてつバスに乗り換えて静岡駅まで行くことができます。
現在時刻は11時ですが、次の静岡方面・横沢行きの自主運行バスは15時43分発…。また乗りに来ようっと(笑)
バス停の向かいにはこんなお店が。おでんのだしの香りが鼻をくすぐります。
井川線の車窓から見た井川ダム。大きいですね。
井川のダム湖には、井川の集落へ向かう無料の渡船があるということで乗ってみたかったのですが「本日欠航」(涙)
井川ダムのあたりを20分ほど散策して駅へ戻りました。
帰路は接阻峡温泉に寄り道
井川線の途中下車におすすめの接阻峡温泉
井川駅11時28分発の列車で帰路につきます。このままいくと千頭には13時14分に着きますが、14時35分発の金谷行きを1時間以上待たなければなりません。
それならば井川線のどこかで途中下車してその次の列車に乗っても、千頭には14時21分に着くので14時35分発の金谷行き列車に乗り継げます。
そこで候補に挙がったのが接阻峡(せっそきょう)温泉です。駅の近くに日帰り温泉があると、金谷駅でもらったパンフレットに載っていました。
閑蔵駅で路線バスに乗り換えて接阻峡温泉へ
井川駅の次の駅。閑蔵駅に到着。下り列車と行き違いのため数分停車します。
駅から少し歩いたところに大井川鉄道の路線バスが待っていました。
11時50分発に乗ります。
上り列車からこのバスに乗り換えたのは私一人だけでしたが、下り列車からの乗り換え客が5~6人いました。
実はこの路線バスを使えば、千頭駅までたったの30分。井川線の列車だと1時間半もかかるのに!
でもこのバスがあるおかげで、片道だけ列車の旅を楽しむという乗り方が可能となります。
大井川周遊きっぷや井川線周遊きっぷを使えば列車もバスも割安で乗り放題になるのでおすすめです。
接阻峡温泉でひと風呂浴びる
バスが動き出したと思ったら、あっという間に接阻峡温泉に到着。たったの4分でした。
運転手さんが「次は接阻峡」とアナウンスしていたので、降り際に「接阻峡温泉はここでいいですか?」と聞き直したら「ああそうだよ。温泉に行くんだったら来た道を戻ったらあるよ。」と教えてくれた。
一瞬で通り過ぎたので気づかなかったのですが、温泉の前を通過していたのでした。
言われたとおりに来た道のほうへ歩いていきます。運転手さんは「すぐそこだよ」みたいに言ったけど、人の足だと近くはない。
接阻峡大橋の向こうに集落が見えます。あの中に「接阻峡温泉会館」があります。
温泉会館のとなりは食事処になっていて、中でつながっています。
さあ旅の汗を流そうかと温泉の受付にいくと誰もいない。仕方がないので食事処のほうへ人を呼びに行ったら「ごめんね~」とおばさんが出てきてくれました。田舎の親戚の家にでも来たようなユルさがいいですね。
入浴料は大人400円、小人200円。大きなお風呂ではありませんが、ほぼ貸し切り状態で手足を伸ばせました。
この温泉は「若返りの湯」と呼ばれているそうで、実際に私も肌がツルツルになりましたよ♪
となりの食事処のおすすめメニュー、揚げたてのかき揚げが気になるけど、ゆっくり食べている時間がないので後ろ髪ひかれながら温泉会館を後にします。
接阻峡温泉駅へ
接阻峡大橋を渡った先に井川線の駅が見えます。
橋のたもとから駅のほうへ延びる小道があったのでそこを登ったのですが、これが失敗!
途中からやぶに邪魔されるようなけもの道でした。
でも景色は良かった(笑)
けもの道から駅につながる車道へ。坂の先には遮断機がない踏切が。
接阻峡温泉駅のそばにある森林露天風呂。隣にある民宿が経営されているようですが、この日はお休みでした。
接阻峡温泉駅からバス停への道案内。木立のなかを5分ほど歩きます。
閑散としていた駅に団体さんがやって来た。そういえば、ふもとに観光バスが停まっていたのはこの人たちだったのですね。
「祝・全線運行」のヘッドマーク。団体のお客さんも熱心に写真を撮っていました。
井川線はこうした団体旅行客が支えているのでしょう。
大井川鉄道に乗るツアー
蒸気機関車やアプト式機関車が走る大井川鉄道は静岡観光の目玉のひとつです。なので、大井川鉄道に乗車するツアーも旅行会社から多数発売されています。
旅行の計画を立てたり、きっぷや宿泊先の手配をするのは苦手という方は、旅行会社のツアーを検討してみてはいかがでしょう。
どんなツアーがあるかは、こちらのページを参考にしてみてください(クラブツーリズムのページが開きます)。
仲間と出会う、感動と出会うクラブツーリズムの旅/人気の北陸・東海ツアー
急行かわね路号を横目に見ながら
アプト区間を下って千頭まで戻ってきました。帰りは往きほどテンションが高くないせいか、車窓観察も散漫になりがちです。
大井川本線のホームにはSL急行かわね路号が停車しています。
私が乗るつもりの普通列車は元十和田観光電鉄の7200系電車で、ロングシートの車内はすでに満席です。
「急行に乗ろうかな」と思いましたが、そうすると金谷到着が1時間遅くなってしまい、このあとの予定が厳しくなるため泣く泣くあきらめました。また乗りに来よう!
まとめ
全線復旧した大井川鉄道井川線は、列車で全線往復すると3時間以上かかるので、足が速い路線バスを組み合わせることで列車の先回りをしたり、沿線への立ち寄りが便利になります。
接阻峡温泉では日帰り入浴ができる「接阻峡温泉会館」が手軽に利用しやすいのでおすすめです。
私は乗れませんでしたが、路線バスで静岡駅と井川駅をつなぐこともできますので、お時間があれば試してみてはいかがでしょうか?