越美線の未成区間となっている、越美北線・九頭竜湖と長良川鉄道・北濃のあいだを、バスと徒歩で乗り継ぐ方法をご紹介します。山道を2時間歩いて県境を越えるタフなコースですので、覚悟してお読みください!
はじめに
岐阜県・美濃太田から北へまっすぐ延びる長良川鉄道は、1986年まで国鉄・越美南線という路線名でした。いずれは福井県の越美北線とつながって越美線となる計画でしたが、国鉄再建のあおりで九頭竜湖~北濃のあいだの27kmを残して計画は凍結されてしまいます。
かつては、未成区間の代替輸送として九頭竜湖と美濃白鳥をつなぐJRバスがありました。私は2000年8月にこのバスを利用したことがあります(そのときの記事はこちら)。しかしこのバスも2002年をもって廃止になり、それ以降、現在に至るまで、公共交通機関を使って越美北線と長良川鉄道の駅をつなぐことはできない状態です。
<参考>福井新聞 2008年11月13日「幻に終わった「越美線」 岐阜との直結断念」
とはいえ、どちらも長い盲腸線である越美北線と長良川鉄道をそれぞれ往復するのは時間のロスがあまりにも大きい! ということで「何とかここを乗り継げないか?」という冒険家が新たな道を開拓してくれました。その貴重な情報をご提供いただきましたので、ここに紹介させていただきます。
謝辞
この記事は hasi さんからいただいた投稿をもとに作成しました。写真もすべて hasi さんからご提供いただいたものです。この場を借りて御礼申し上げます。
投稿主からひとこと
投稿主の hasi です。2015年9月初旬に越美線の未成区間である越美北線・九頭竜湖駅から長良川鉄道・北濃駅まで、バスと徒歩による乗り継ぎを敢行しましたので、その報告をいたします。越美線に興味を持たれている方の参考にしていただければ幸いです。
第1日 九頭竜湖にて宿泊
2015年9月1日。越美北線の列車で九頭竜湖駅にやって来た。今回は九頭竜湖に宿を取ったおかげで、時間を気にせず九頭竜湖周辺の散策を楽しむことができた。下の写真は九頭竜ダム(日本ダム協会のページにリンク)。
本日の宿は、九頭竜湖駅前にあるプチホテル・PaPaMaMa(日本観光振興協会のページにリンク) 。青い三角屋根がかわいらしい、メルヘンチックな建物です。
宿泊料金は素泊まり5500円、朝食付きだと6300円(税込)とリーズナブル。夕食はこのオーナーが軽喫茶をしているので、そこで食べることができます。カツ丼、スパゲティーなど1000円以下のメニューが並んでいました。
また、九頭竜湖駅のとなりにある道の駅・九頭竜の直売所では、17時までですが、地元の方々が作った舞茸弁当(400円)が手に入ります。お総菜もいろいろ売っていました。
ちなみに、九頭竜湖での宿泊としてはこのほか、駅から少し離れたところに国民宿舎 パークホテル九頭竜があります。ただ、大学のサークルやクラブ活動の合宿利用が多いみたいなので、一人客の宿泊は難しいかもしれません。
これ以外に私が調べた中で近い宿は、越前下山駅近くに1軒ありましたが料金は高め。越前大野駅だと、旅館はありましたがホテルは見当たりませんでした。
越美北線・越前大野駅に近い宿泊施設
第2日 九頭竜湖駅から北濃駅へ
9月2日。この日の行程は以下の通りです。
- 九頭竜湖駅 10:15発→前坂家族旅行村 10:30着 【大野市営バス(要予約) 100円】
- 前坂旅行村 10:30発→石徹白ダム 10:55着/11:00発→小谷堂(こたんどう)11:25着→県境 11:55着→下在所(石徹白地区)12:30着 【徒歩】
- 下在所 13:00発→上在所 13:05着 【白鳥交通(バス)・石徹白線 110円】
- 上在所 13:15発→北濃駅 13:50着 【白鳥交通(バス)・石徹白線 310円】
- 北濃 14:01発→郡上八幡 14:45着 【長良川鉄道】
九頭竜湖駅→前坂家族旅行村 【大野市営バス】
大野市営バスの前坂線には定時運行便と予約便があります。私が乗りたい便は予約便だったので事前に電話しておきました(予約先:いずみタクシー 0779-78-2022)。このバスは予約したお客様が乗られた時点でダイヤは無視され、他のお客様がいない限り目的地まで直行します。
前坂家族旅行村は、山に囲まれた何も無いところでした。とはいえ、石徹白(いとしろ)川沿いにキャンプ場があるのでアウトドア好きな方なら楽しめそうです。
前坂キャンプ場は楽天トラベルから予約することができます。アウトドア好きな方はどうぞ!
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前坂家族旅行村→下在所 【徒歩】
前坂からは徒歩で、次のバス停がある下在所を目指します。「通行注意」だそうです。
福井県道127号線・三面(さつら)付近。「さんめん」と書いて「さつら」。これはなかなか読めない。
途中、石徹白ダムを眺めたりしながら、山のなかの一本道をひたすら歩きます。
福井・岐阜県境の福井県側の小谷堂(こたんどう)というところにあった「守護本尊堂跡」の碑。ぽつんと碑が立っているだけで、それがどういうものだったのかという説明は見当たらず…
きれいな緑と清流、そして、澄んだ空気に癒されます。
杉木立のあいだをまっすぐ伸びる道。晴れていても薄暗い。
そろそろ県境に差し掛かるはずですが、福井県と岐阜県の県境を明示する標識が見当たらない。川沿いに立っていた看板をよく見てみると、「休猟区・岐阜県」の標識の向うに「奥越漁業協同組合」の看板。どうやらここが県境らしい。
岐阜県側には「石徹白漁業協同組合」の看板が立っていました。県境を越えると気分も上がります。ここから目的地の下在所まで30分ほどです。
小さなトンネル。クルマが走って来たらちょっと怖そう。
下在所→石徹白→上在所→北濃駅 【白鳥交通バス】
前坂から2時間歩いて下在所のバス停に到着。ここから白鳥方面のバスに乗ればよいのですが、時間があるので上在所行きのバスに乗って折り返すことにします。
下の写真は下在所のとなりの石徹白バス停。石徹白には郵便局と診療所がありましたが、他には何もなく、自動販売機すら見つけるのが難しい感じでした。
石徹白からさらに山の方へ行くと、樹齢1,800年といわれる石徹白大杉があるそうで、その入口のところに上在所バス停がありました。
下の写真は上在所に停車中の白鳥交通の車両。白一色のシンプルな塗装が、むしろ新鮮に見えます。補足ですが、白鳥交通は郡上市コミュニティバス・石徹白線の運行を担当している会社です。
上在所からバスに乗ること35分。長良川鉄道の北濃駅に到着したのは昼下がりの13時50分でした。長かった乗り継ぎの旅もようやくゴールです。
長良川鉄道・郡上八幡駅に近い宿泊施設
おわりに
夢と消えた越美線。もしも開通していたなら、この区間をどれくらいの時間で走破したのだろうか。ふと、そんなことに思いを馳せた未成線の旅でした。
今回は九頭竜湖から北濃へ抜けましたが、前坂から石徹白までの徒歩はゆるい上り坂となります。つまり、逆方向の石徹白から前坂へ歩けばゆるい下り坂でラクといえますが、その差はそれほど気にならないかと思います。ご参考まで。